番外⑥ ACSとlaparoscopic
今週は福岡で第25回JDDWが開催されています。学会自体には業務上参加は困難でしたが、今回 6th Lap colorectal advanced seminar に参加してきました。
今回の考察は、上記セミナーの内容や内視鏡外科専門医の話とは異なり、ACS領域と腹腔鏡手術についてです。
ACSは基本的に緊急手術ですので、腹腔鏡の適応は各学会でも議論の的としてよく登場します。今年も同様です。特に「Trauma incision」による手術とは、大袈裟に言うと対極に位置しますね。
今回は外傷手術についてのみの考察です。
手術目的の種類をよく考える必要があります。
まず、二大目的として、
①出血コントロール
②消化器腹膜炎のコントロール
があります。
特にPrimary surveyによる救命目的の手術において腹腔鏡の出番はなさそうです。つまりnon responder などで腹腔鏡を行うケースはないと断言して良さそうです。もちろんlethal triad基準の一つでもあればやはり行うケースはないと考えます。状態が安定していて、造影CT撮影後にその適応が少しあると思います。
他手術目的として出血でも消化性腹膜炎でもない場合もあり、すべてではないですが
③膵損傷
④横隔膜損傷
⑤泌尿器系臓器損傷
⑥高度腹壁損傷
⑦試験開腹目的 など
①〜⑦はそれぞれがオーバーラップして手術目的が2つ以上ある事もよくあります。
外傷手術において、腹腔鏡手術を妨げるものは「視野確保(ワーキングスペースも)が難しい事による手術継続困難と見落とし」だと思います。腹腔鏡手術の基本の一つはドライな術野維持ですので、最初から出血があり、また出血する瞬間を見ることができない外傷においては当然ハードルがあがります。出血量が多いと同様に定期手術やAcute General surgeryでも、高度癒着や高度消化管拡張は、視野確保困難でありハードルがあがります。
つまり、出血や腸管拡張がどのくらいあるかを経過、診察、超音波、CTで見極める事も腹腔鏡の可能性を見いだす一つとなるのではと考えます。
加えて一般的な腹腔鏡手術の適応を考えるにあたって、呼吸、循環などの影響も考慮する必要があり元々の並存疾患や現在の外傷による呼吸循環の状態から適応を考えます。
ここまでをまとめると、
1)患者因子
(並存疾患、バイタル、lethal triad)
2)出血程度、腸管拡張程度
3)出血や腹膜炎以外の手術の存在
を意識する必要がありそうです。
それに加えて外科医個人と内視鏡外科チームの成熟度にあわせて適応を考えていけばよいのかなと思います。絶対に腹腔鏡を適応しない方針や腹腔鏡補助下の方針も悪くないと考えます。
最後に、腹腔鏡の適応も大事ですが、腹腔鏡を中心とする拡大視効果からの外科的解剖学の進歩はどんな立場のACSもアップデートしていかなければ取り残されてしまうという危機感は常に持つべきだと強調したいと思います。
*上記は適切な診療を保証するものではございません。あくまで私見が混じっていますのでご了承ください。お叱りなどあればいつでもコメントでご意見ください。
・番外ばかりですみません