目指せ!Acute care surgeon

Acute care surgeryにまつわる私見を交えたお話(いつでもご意見/御指導コメントください)

番外⑦第45回日本救急学会総会

  最近試験勉強を猛烈に行っていた関係もありまたもや投稿が滞りました。マルチタスク処理ができていないですね。猛勉強の最中、ふと大学入試のセンター試験のあの独特な雰囲気が脳裏に浮かびました、良い思い出であり辛い思い出でもあります。医学以外の昔の経験はきつい思い出も少し軽めに記憶が塗り替えられているような気がします。

  とにかく参加発表後すぐではないのですが、思い出しながらアウトプットしていきます。ヘルマン・エビングハウス忘却曲線などによると4分の3くらいは忘れていることになりますが。。

  今年の救急学会総会は大阪の国際会議場•リーガロイヤルホテルで開催されました。Acute care surgery領域と重なる部分も多いですが、やはり内科的救急疾患•sepsisや中毒、medical controlなども含まれ多彩な領域です。だからこそ勉強にもなります。

  特に今回は統計学の話が気になりました(救急医学ではないじゃないか)。クリニカルクエスチョンから検討し、発表し、論文にするという、凄く当たり前の事も再度考えさせられました。同時に会場ではドリカムの大阪loverが流れており、センター試験の回想と同じく、懐かしい気持ちになりました。

  今回はここまでとします。

番外⑥ ACSとlaparoscopic

今週は福岡で第25回JDDWが開催されています。学会自体には業務上参加は困難でしたが、今回 6th Lap colorectal advanced seminar に参加してきました。

 

今回の考察は、上記セミナーの内容や内視鏡外科専門医の話とは異なり、ACS領域と腹腔鏡手術についてです。

 

ACSは基本的に緊急手術ですので、腹腔鏡の適応は各学会でも議論の的としてよく登場します。今年も同様です。特に「Trauma incision」による手術とは、大袈裟に言うと対極に位置しますね。

 

今回は外傷手術についてのみの考察です。

手術目的の種類をよく考える必要があります。

 

まず、二大目的として、

①出血コントロール

②消化器腹膜炎のコントロール

があります。

特にPrimary surveyによる救命目的の手術において腹腔鏡の出番はなさそうです。つまりnon responder などで腹腔鏡を行うケースはないと断言して良さそうです。もちろんlethal triad基準の一つでもあればやはり行うケースはないと考えます。状態が安定していて、造影CT撮影後にその適応が少しあると思います。

他手術目的として出血でも消化性腹膜炎でもない場合もあり、すべてではないですが

③膵損傷

④横隔膜損傷

⑤泌尿器系臓器損傷

⑥高度腹壁損傷

⑦試験開腹目的 など

①〜⑦はそれぞれがオーバーラップして手術目的が2つ以上ある事もよくあります。

 

外傷手術において、腹腔鏡手術を妨げるものは「視野確保(ワーキングスペースも)が難しい事による手術継続困難と見落とし」だと思います。腹腔鏡手術の基本の一つはドライな術野維持ですので、最初から出血があり、また出血する瞬間を見ることができない外傷においては当然ハードルがあがります。出血量が多いと同様に定期手術やAcute General surgeryでも、高度癒着や高度消化管拡張は、視野確保困難でありハードルがあがります。

つまり、出血や腸管拡張がどのくらいあるかを経過、診察、超音波、CTで見極める事も腹腔鏡の可能性を見いだす一つとなるのではと考えます。

 

加えて一般的な腹腔鏡手術の適応を考えるにあたって、呼吸、循環などの影響も考慮する必要があり元々の並存疾患や現在の外傷による呼吸循環の状態から適応を考えます。

 

ここまでをまとめると、

1)患者因子

   (並存疾患、バイタル、lethal triad)

2)出血程度、腸管拡張程度

3)出血や腹膜炎以外の手術の存在

を意識する必要がありそうです。

それに加えて外科医個人と内視鏡外科チームの成熟度にあわせて適応を考えていけばよいのかなと思います。絶対に腹腔鏡を適応しない方針や腹腔鏡補助下の方針も悪くないと考えます。

 

最後に、腹腔鏡の適応も大事ですが、腹腔鏡を中心とする拡大視効果からの外科的解剖学の進歩はどんな立場のACSもアップデートしていかなければ取り残されてしまうという危機感は常に持つべきだと強調したいと思います。

 

*上記は適切な診療を保証するものではございません。あくまで私見が混じっていますのでご了承ください。お叱りなどあればいつでもコメントでご意見ください。

・番外ばかりですみません

 

 

多発外傷⑭ 骨盤外傷 不必要事例はゼロにしない

今回は骨盤外傷についてです。

鈍的外傷が多い本邦では比較的よく遭遇する外傷です。

重症度は様々で、例えば恥骨に骨折線が入っているのみのものから、

不安定型骨盤骨折で大量後腹膜出血により致死的ものまであります。

PTD(防ぎ得た死)の中に占める割合は小さくない外傷だと考えます。

ウォークイン(歩いてきた患者様)が大量出血していることにもまれに遭遇します。

 

搬送症例であれば、Prehospitalの段階で骨盤に動揺性があるなどの情報があったり、

墜落外傷やその他高エネルギー外傷の場合、

重症の骨盤骨折が存在している可能性があります。

 

輸血、REBOA、シーツラッピング、整形外科体制、TAE、ガーゼパッキングなど

準備はできているでしょうか?

 

DSA室・手術室を立ち上げてやっぱり使用しなかったというケースもあります。

話は少しそれますが、『Unnecessary』率をゼロに近づけれるのは理想ですが、

DSA室/手術室の立ち上げ・試験開腹(腹腔鏡)・試験開胸(胸腔鏡)の

Unnesessaryをゼロにする(なる)事はPTD(防ぎ得た死)の第一歩になりうると

考えるべきです。

つまり、致死的外傷とわかってから準備を始めても、間に合わない事があり、

すぐそこにPTDになる可能性が待っているという事を改めて強調したいと思います。

 

話を骨盤骨折に戻します。

ACSとしてはTAEと後腹膜ガーゼパッキングだと思います。

〇30分以内にTAEを行う事ができる+〇腹腔内損傷の可能性がない

という条件を忘れないようにしないといけないと考えます。

 

前者はやや繊細な問題です。

・DSA室が使用できない・立ち上げに時間がかかり間に合わない

・DSA施行医がいない・間に合わない

放射線技師がいない・間に合わない

 

施設間、地域差、体制などによって時間的に間に合わないときは

その瞬間にできることを行うべきです。

つまり初療室でシーツラッピングを行い、

場合によっては初療室で後腹膜ガーゼパッキングを行い、

その後TAEを追加するもしくは転院する。

もちろんREBOAや輸血・止血剤も考慮。

 

今日はここまです。

骨盤骨折の考察により考えるべきこと(汎用的ですが)、

①Unnessesary率はゼロに近づけるべきだが、ゼロだと弊害が潜む可能性あり

②瞬間瞬間で限られた資源を把握実行

*あんまり骨盤骨折の詳細の考察になっていないですね。

*不適切なパッキングも厳禁です。

 膀胱前腔の解剖や仙骨レベルまでのパッキングをいかに行うか?

 

  *上記は適切な診療を保証するものではございません。あくまで私見が混じっていますのでご了承ください。お叱りなどあればいつでもコメントでご意見ください。

 

番外⑤ 第9回ACS発表後

滞在時間も短く、あっと言う間の札幌でした。

 

小生の小さな発表はさて置き、幾つかの有意義な考えを頂く事ができました。

 

中でも印象的であったのは

『Acute care surgeonは外科専門医であるべきである』と複数の国手達もはっきりと言及していた事です。

 

ACSの未来を考える中でも、大きな議論となっている『ACS 専門医の基準』の話です。

現在では明確な専門医基準はありません。

 

『Acute care surgeonは外科専門医であるべきである』

 

 そんな事は当たり前だと考える人も多くいると思いますし、私も以前より同様の事を確信しています。しかしながら、幾つかの問題点があります。

 

1)真の意味での外科専門医で維持をできていない指導的立場の医師

2)外科専門医はいらない(今更取る時間の確保が厳しい)が、ACS領域を支えているバリバリのスタッフ医師

3)これからACSを目指す救急科志望の医師が、救急専門医取得→外科専門医取得の流れで(もしくは逆)キャリアを積まなければならず時間がかかる

 

以上のようなことが問題点です。

 

 そもそもAcute care surgeonは、その領域の特性上、専門医の厳格な『質』も必要ですが、あまり狭き門になると社会的ニーズに反してしまいます。時間的制約があり、かつ生命に直結しかねない専門医なので地方や市中病院でも少しでも質の高いACSを配置する事も重要です。

 

(転院搬送する時間すらない場合がある)

(転院基準を迅速に判断する力も必要)

 

外科専門医自体を目指す医師が少なくなってきており、さらに専門であるACS専門医を目指してもらうにはどうするか?

 

幾つかの突破口はありますが、一番は『ライフワークバランスの確保』と考えます。どの科の医師もどの職業も同じでしょうが・・。

 

直ぐにAIによる仕事のシェアを脳裏をよぎるのは自分が短絡的だと思いますので、少し時間を置いて更に考えていこうと思います。

 

(最近、ある書籍で殆どの仕事はスマホでできる、という意見に感化されフリック入力を更に力を入れてます)

 

 

 

番外④ 第9回ACS学会 札幌に向けて

今日から札幌でACS学会ですね。

業務上明日小さな発表のみです。

勿論他のAcute care surgeon からも吸収してきます。ACSの未来に向けて熱い議論が交わされるのでしょうか? 最近ACS症例が多くよい疲労感のまま北海道へ向かいます。

 

話は変わりますが、来年の日本外科学会の要望演題でもACSの教育についてがありました。教育システムについても再度考察してみようと思います。

 

きっと問題点と打開策の材料はACS学会で頂けるでしょう。

 

 

番外③ Off-the job trainingの真の意義

 ある外傷手術Off the job trainingに向けて粛々と事前勉強をしていましたので最近更新が滞っていました。

 

 体幹部外傷を中心に診療を行うAcute care surgeonのためのOff the job trainingとしては、「ATOM」、「SSTT」、「DSTC」、「献体による外傷手術修練」などが代表的です。

 

 それぞれ異なった長所がありますが、いずれも背景に『外傷手術の減少とその特殊性』があり、戦略(手術 vs NOM、開胸first vs開腹firstなど)と戦術(DCSを含む術式選択など)をOff the job trainingで身につけていきます。

 

 特にそのなかでも自身にとって、

①選択困難例直面時に立ち返る汎用的ロジック

②国手・先人の医師たちが身をもって経験しているピットフォール

 の以上の2種類のパールを吸収することが何物にも代えがたいです。

 またもう一つ外せないのが、

③自分の戦略や技術をより経験がある医師+初対面の医師に披露・評価されること。

 (勝手知ったる関係でもなく、所謂お互いの慣れもない)

 単純な剥離・運針・結紮等でも良い緊張感があり、1日もしくは数日の外科研修では到底体験できないことも受講を受ける側は意識すべき利点だと考えます。もちろん実臨床時ほどの感情(叱咤など)はないですが。

 

 詳細公開は致しませんが、4つのコースをそれぞれ受講してからの感想です。

また今後も診療・教育・研究(+学会発表/出席+ブログ更新?)部門で精進します。

多発外傷⑬ 頸部損傷:ZoneIIが馴染み深い?

今回は頸部損傷について考えていきます。

(本当は肝損傷から脾損傷の流れなのですがすみません。)

いつもの事ですがOUTPUT+忘備録なので駄文はご容赦ください。

 

まずは有名なZone分類から

ZoneI 輪状軟骨~鎖骨

ZoneII 輪状軟骨~下顎角

ZoneIII  下顎角~頭蓋底

 

一般外科や消化器外科からするとZoneI~IIが比較的なじみ深く、ZoneIIIはなかなかなじみが薄い(場所としても困難を極める事が多い)印象です。

 

まずは気管切開などで前頸静脈や胸骨舌骨筋/肩甲舌骨筋の取り扱いの修練となるのでしょうか(最近はネオパークが多いですが…。)

 

例えば、食道癌手術における頸部リンパ節郭清(#101、104、106)や頸部領域での再建において、甲状腺・総頚動脈・内頸静脈・迷走神経・総顔面静脈、中下甲状腺血管、反回神経・筋群などを扱う機会はあります。甲状腺手術においても同様かと思います。特に反回神経の取り扱いや頸部食道損傷は基本的には左からアプローチすることなども比較的馴染み深いと思います(あくまで比較的ですが)。

 

しかしながら上述したようにZoneIII、例えば内/外内頚動脈をテーピングして舌下神経などをテーピングする待機手術はなかなか一般外科では修練するチャンスは少ないと考えます。

ZoneIにおきましても実際には頸部食道癌などは扱う機会もほとんどないので、胸骨正中切開を加えたりする術式は頻度が低いのではないかと思います。

(施設によっては喉頭咽頭がんの助手などで経験をつむ?)

 

気道確保と止血の話に戻ります。

 

気道確保:挿管⇒輪状甲状靭帯穿刺/切開

止血:圧迫(静脈であれば空気塞栓にも留意)、縫合止血、結紮、シャント、人工血管の使用、3-5FrFogatyカテーテルの使用、気道出血時の挿管チューブバルーン圧迫、TAEの選択など

 

修練としてよく出てくるのは、胸鎖乳突筋前縁にそって乳様突起~胸骨切痕までを切開し展開するNeck explorationです。詳細は著書にお願いしますが、やはり総顔面静脈が一つのゲートキーパーであることや頸動脈洞の取り扱いなどが気になるところです。また、余談ですが消化器外科や甲状腺外科の手術では超音波切開装置(ハーモニックなど)を使用しています。目的血管までの細かい血管処理には使用した方が早い場合もあるのでは?とふと思いました。

 

最後に比較的馴染み深いZoneII(I)と言っても、後方成分は馴染みは薄いです。椎骨動脈損傷におけるパッキングや鎖骨上アプローチから横隔神経を温存し、前斜角筋を切離して中枢の鎖骨下動脈を露出するというのはなかなか定期手術での獲得は困難ではないかと思います。

*鎖骨下静脈や鎖骨下動脈の遠位部は乳がん手術のLevelI-III郭清からの経験が少し生きてくるのではないかと思います。

 

救命のチャンスがある頸部刺創などにはACSとして上記のようなコンセプトで修練/準備を行うことが必要だと感じました(適切な専門医のコンサルトも当然ですが)。

 

【まとめ】

頸部外傷は気道確保と止血。

ZoneIIの前面側面以外は特別な意識をもって修練が必要

 *上記は適切な診療を保証するものではございません。あくまで私見が混じっていますのでご了承ください。お叱りなどあればいつでもコメントでご意見ください。