多発外傷⑪-2 蘇生的開胸の小さな?こだわり
【前回までのまとめ】
①Primary surveyの習得
②蘇生の習得(ACSとして何ができるか?)
③頭部外傷(二次性脳損傷予防)
④四肢外傷(PTD+PTD、四肢コンパートメント)
⑤胸部外傷:胸腔ドレナージから開胸
今回も胸部外傷について、特に開胸について考えていきます。
開胸の種類はさまざまありますが、
外傷の戦術としては
・左前側方開胸
・クラムシェル開胸
・胸骨正中切開
・他Trap door、前側方開胸+後方開胸
が代表的な開胸方法と多くの書籍で紹介されています(ex ATOM 2nd edition )。
蘇生的開胸とすれば第一選択は左前側方開胸です。
スピードと下行大動脈クランプおよび心臓へのアプローチを考えるとやはり左前側方開胸だと思います。
消毒⇒メス⇒皮膚+皮下脂肪⇒肋間筋⇒壁側胸膜で開胸、開胸創(胸膜)を広げるのはクーパーで行っています。開胸器をかけ、助手が肺を圧排し(必要あれば下肺靭帯を切離し)、下行大動脈をクランプ(必要あれば心マ)。
国手の先生方もよく言われますが広背筋まで(後まで)行き過ぎると出血多くなります。また内胸動脈からも出血します(あらかじめ結紮?あとで確認?)。
上縦隔アプローチ必要症例が少ないので最近はクラムシェルの状態で上縦隔を確認する事が多いです。無名静脈のアプローチくらいまでは個人的にはいけるかと思います。大動脈弓分岐まで含めた細かいアプローチは厳しいと思います。
左前側方開胸でも左横隔神経に留意しつつ心膜開放は可能だと思いますが、心損傷などがあればクラムシェルに切り替えていく必要があると思いますので、この時点で胸骨を胸骨ノコで切開する必要があります。準備の段階で実は充電されていない状況などは論外だと心しています。
胸骨が薄い症例で待ちきれない時はクーパーなどで切断する場合もありますが、決してBest Choiceではなく、外科医としては手術器具を大事に扱う事は修練開始後すぐおしえられますよね。つまりクーパーが使えなくなる可能性が高いということです(骨とかをきると。)
心嚢を開放しチャンスのある心損傷(右房損傷など)があれば、用手圧迫、縫合(プレジェットも含め)、バルーン、スキンステープラなどで修復していきます。縫合糸などは術者/施設などでいくつかあらかじめ決めていたほうが良いかと思います。
最近オプションの一つとして3-0の針の直径が長い針糸も導入しました。
4-0,5-0,6-0の針の直径が長いものも決めていきたいと思います。特にここは賛否両論が強いところだと思います。糸が細くなるにつれて直径が長い針の選択が少なくなってきます。
ACSとしてどこまでできるようになる必要があるか。
なかなか難しいです。
しかしながら、多くの既存専門医資格も、すべての領域疾患を100点満点にこなさないといけないような資格はそもそもないので、いい意味である程度のレベルで線引きをするべきと考えます。
【まとめ】
蘇生的開胸の細かい手順と施設でのこだわりをもつ。
*上記は適切な診療を保証するものではございません。あくまで私見が混じっていますのでご了承ください。お叱りなどあればいつでもコメントでご意見ください。