目指せ!Acute care surgeon

Acute care surgeryにまつわる私見を交えたお話(いつでもご意見/御指導コメントください)

多発外傷④ 緊張性気胸と『躊躇』

 

【前回までのまとめ】

①Primary surveyの習得 

②蘇生の習得⇒Air wayと『焦り』のメカニズムを理解し、「不安」を減らす

さて今回はABCDEアプローチの「B:Breathing」です。

Flail Chest, Tension pneumothorax, Open pneumothorax, Massive hemothorax

上記4つ。いずれも厄介であり循環への影響もあり確実・迅速な対応が必要です。

特にTension pneumothoraxは「身体所見で判断すべきであり、胸部レントゲンを待つことで治療が遅れることがあってはならない」とされており、気道緊急同様に特にタイムプレッシャーがかかっています。

 

緊張性気胸の身体所見。

 

呼吸不全+循環不全(ショック)、胸郭膨隆、頸静脈怒張、両側腋窩部位聴診による呼吸音減弱・消失、打診鼓音、触診で皮下気腫、他気管偏位。

 

ただ多発外傷の現場では、時に正確な身体所見がとりずらい…。

そして以下のような複合的な上級編?な症例も存在する

「緊張性気胸(呼吸不全(B)+閉塞性ショック(C)」ではなく(だけではなく)

●「通常の気胸+出血性ショック」 ex 血胸、後腹膜など

●「通常の気胸+高度肺挫傷による致死的呼吸不全からのショック」

●「通常の気胸+神経原性ショック」ex致死的頭部外傷

しかしながら上記複合的致死的の各診断は蘇生におけるABの段階では明確にならないことが多い。こういった類のジレンマは緊張性気胸問題にかぎらず多発外傷ではありうる。上記ジレンマの解消には一つしかなく、

 

『疑ったら躊躇せずに胸腔ドレナージ(穿刺)』。

 

優れた救急医、外科医、Acute care surgeonであれば

胸腔ドレーン挿入までの時間は30秒もかからない。

そもそもTension pneumothorax であれば鉗子で胸腔を開放させるまでの時間が重要であるので15秒程度(穿刺ならもっと早いが)。

 

ただし気道確保(A)やfluid resuscitatoin(初期輸液療法)、時には緊急O型輸血などでもショックバイタルが立ち上がる可能性があり、緊張性気胸の証拠としてのレントゲンは残っていてはおかしい(レントゲン前に処置する必要あるから)ので、実際本当の意味での答え合わせはできない時も多いと思います。

 

「緊張性気胸だったかなあ」という時もあるのではないでしょうか?

 

多発外傷の患者様を目の前にして、バイタル異常があり、広範囲皮下気腫、胸郭動揺を見て触った時点で(もしくは病院前情報)、それが緊張性気胸の確診を得られずとも胸腔ドレーンを入れない外傷医はいないのではないでしょうか?

 

 

Acute care surgeonがいつも胸腔ドレーンを入れる必要はありませんが、その後大量血胸であればそのまま側方開胸やクラムシェル切開開胸などに移行する場合もあります。胸腔ドレーン⇒開胸の流れも常に準備。

【まとめ】

①Primary surveyの習得 

②蘇生の習得

 Air wayと『焦り』のメカニズムを理解し、「不安」を減らす

 ⇒Breathing: 緊張性気胸疑いに「躊躇」は不要 

 *上記は適切な診療を保証するものではございません。あくまで私見が混じっていますのでご了承ください。