多発外傷⑭ 骨盤外傷 不必要事例はゼロにしない
今回は骨盤外傷についてです。
鈍的外傷が多い本邦では比較的よく遭遇する外傷です。
重症度は様々で、例えば恥骨に骨折線が入っているのみのものから、
不安定型骨盤骨折で大量後腹膜出血により致死的ものまであります。
PTD(防ぎ得た死)の中に占める割合は小さくない外傷だと考えます。
ウォークイン(歩いてきた患者様)が大量出血していることにもまれに遭遇します。
搬送症例であれば、Prehospitalの段階で骨盤に動揺性があるなどの情報があったり、
墜落外傷やその他高エネルギー外傷の場合、
重症の骨盤骨折が存在している可能性があります。
輸血、REBOA、シーツラッピング、整形外科体制、TAE、ガーゼパッキングなど
準備はできているでしょうか?
DSA室・手術室を立ち上げてやっぱり使用しなかったというケースもあります。
話は少しそれますが、『Unnecessary』率をゼロに近づけれるのは理想ですが、
DSA室/手術室の立ち上げ・試験開腹(腹腔鏡)・試験開胸(胸腔鏡)の
Unnesessaryをゼロにする(なる)事はPTD(防ぎ得た死)の第一歩になりうると
考えるべきです。
つまり、致死的外傷とわかってから準備を始めても、間に合わない事があり、
すぐそこにPTDになる可能性が待っているという事を改めて強調したいと思います。
話を骨盤骨折に戻します。
ACSとしてはTAEと後腹膜ガーゼパッキングだと思います。
〇30分以内にTAEを行う事ができる+〇腹腔内損傷の可能性がない
という条件を忘れないようにしないといけないと考えます。
前者はやや繊細な問題です。
・DSA室が使用できない・立ち上げに時間がかかり間に合わない
・DSA施行医がいない・間に合わない
・放射線技師がいない・間に合わない
施設間、地域差、体制などによって時間的に間に合わないときは
その瞬間にできることを行うべきです。
つまり初療室でシーツラッピングを行い、
場合によっては初療室で後腹膜ガーゼパッキングを行い、
その後TAEを追加するもしくは転院する。
もちろんREBOAや輸血・止血剤も考慮。
今日はここまです。
骨盤骨折の考察により考えるべきこと(汎用的ですが)、
①Unnessesary率はゼロに近づけるべきだが、ゼロだと弊害が潜む可能性あり
②瞬間瞬間で限られた資源を把握実行
*あんまり骨盤骨折の詳細の考察になっていないですね。
*不適切なパッキングも厳禁です。
膀胱前腔の解剖や仙骨レベルまでのパッキングをいかに行うか?
*上記は適切な診療を保証するものではございません。あくまで私見が混じっていますのでご了承ください。お叱りなどあればいつでもコメントでご意見ください。